ライターの寺野典子さんが、素敵なコラムを書いて下さいました。
「今は自分の存在価値を証明したい」 長谷部誠が得た理想のポジション:Number Web
長谷部クンが、ドイツへ渡る前、思い描いていた日々。
それが今、ようやく、フランクフルトの地で過ごせている。
ヴォルフスブルクで過ごした5年半は、守備的ミッドフィルダーとしてよりも、サイドのプレーヤーとして出場する機会が多く。
それすらも、奪われた日々もあった。
ヴォルフスブルクでは、サイドでキャリアを積みながらも、代表チームでは、守備的ミッドフィルダーとしての任務を課される。
「クラブで守備的ミッドフィルダーとしてのキャリアを積んでいれば、もっと成長できたかもしれない」
そんな考えも頭をよぎった事もあった。
そんな中で、自分の力を最も発揮できるポジションでキャリアを積むことを、ファーストプライオリティとして移籍を決断した。
ニュルンベルクを経て、現在、フランクフルトで、念願のポジションで試合経験を積む毎日。
セントラル・ミッドフィルダーとして、自分の存在価値を証明したいと、そんな想いが強くなる。
30歳を越えて、ドイツでやっとたどり着いた本来のポジション。
年齢の部分で言えば、ヨーロッパの大きなリーグでコンスタントにプレーする日本人選手としては、これから未知の部分へと入っていく・・・。
新たな挑戦を始める長谷部クンの、ドイツでのプレーヤーとしての変遷、その時々の想い、そして、これからの挑戦を綴ってくれた寺野さんのコラム。
少し長いですが、記事の最後で全文ご紹介しますね。
フランクフルトで、現在、高い評価を得ている長谷部クン。
先程のコラムの中でも、次のように語っています。
「評価というのは第三者、自分以外の人がするもの。だから、もちろんそういうところも大事だけど、一番大事にしているのは自分がどう感じるかという部分。フランクフルトで課せられた役割というのは、ある程度自分とマッチしているのかなと思う」
「このポジションは、チームのパフォーマンスにすごく影響を与えるポジション。もともと自分は、すごく良い時もなければ、すごく悪いときもない。どちらかというとコンスタントにプレーできる選手かなと思っている」
長谷部クンのパフォーマンスが、チームの勝利を左右するといっても過言ではないチーム状況で。
長谷部クンにかかる責任は、日に日に増しています。
ただ、それを愉しんでいるかのように、常に安定したパフォーマンスを見せる長谷部クン。
以前からご紹介しているオプタのデータで、依然として日本人選手の最高位を保持しています。
後程、記事をご紹介しますね。
では、明日のシュツットガルト戦に向けて練習に励む長谷部クンの様子、写真でご紹介したいと思いますが。
長谷部クン、先日のサイン会の時に、シュツットガルト戦に向けて、Frankfurtの日本語Facebook を通じて、次のようなコメントを残してくれました。
「アウェイ戦での試合結果が良くない状況なので、週末のVfBシュトゥットガルト戦は勝ちたいです。応援よろしくお願い致します!」
なかなかアウェイで勝てなくて、連勝出来ず、チームはなかなか波に乗れませんが。
シュツットガルト戦に勝って、チームの士気を高めて、代表ウィークに入れればと思います。
長谷部クンも、気持ち良く、帰国して欲しいですね。
帰国した後も、気持ち良く過ごして欲しいと思います・・・。
頑張れっ、長谷部クン!!
頑張れっ、乾クン!!
頑張れっ、フランクフルト!!
【写真】
<18日>
3月18日の練習風景になります。
本日は、怪我で長期離脱中のコンスタン ジャクパ(DF)もリハビリに励んでおりました。
前日の練習を欠席したアレックス・マイアーも元気に練習に参加。
前節で負傷交代したカルロス サンブラーノは別メニューで調整。
乾、長谷部は練習に参加しておりました。
(Frankfurtの日本語Facebook より)
(Frankfurtの日本語Facebook より)
<19日>
この日は、前節・パダーボルン戦で怪我から復帰し、ゴールを決めたバルデス選手とのコンビで練習する事が多かったようですね。
バルデス選手の注目度が高かったせいか、たくさん写真がありました。
以下、Frankfurter Neue Presse より
【記事】
欧州4大リーグ、オプタ番付。白星貢献の長谷部が日本勢首位をキープ。総合トップのメッシも変動なし:フットボールチャンネル
http://www.footballchannel.jp/2015/03/17/post77438/
(フットボールチャンネル より)
スポーツデータ会社の『オプタ』が16日、欧州4大リーグ(スペイン=27節、※イングランド=29節、ドイツ=25節、※イタリア=27節)に所属する選手のパフォーマンスデータを更新し、14日にホームで行われたパーダーボルン戦でフル出場し、4-0での大勝に貢献したフランクフルトの日本代表主将、MF長谷部誠が総合134位(前回107位)に順位を下げたものの、日本勢最高位を保持した。
スポーツデータ会社の『オプタ』が16日、欧州4大リーグ(スペイン=27節、※イングランド=29節、ドイツ=25節、※イタリア=27節)に所属する選手のパフォーマンスデータを更新し、14日にホームで行われたパーダーボルン戦でフル出場し、4-0での大勝に貢献したフランクフルトの日本代表主将、MF長谷部誠が総合134位(前回107位)に順位を下げたものの、日本勢最高位を保持した。
ブンデスリーガで8位につけているフランクフルトの長谷部は、同リーグの総合ランキングでは33位(前回23位)、MFに絞ると15位(前回11位)にそれぞれ後退。フランクフルトではドイツ人FWアレクサンダー・マイヤーに次ぐ2位。同リーグ1位(総合4位)は、首位バイエルン・ミュンヘンのオランダ代表FWアリエン・ロッベンが維持。
日本勢2位は、敵地でメンヘングラートバッハに0-2で敗れ、ブンデスリーガで13位に順位を下げたハノーファーの日本代表MF清武弘嗣が、総合144位(前回161位)で続いた。清武は同リーグで36位(前回39位)、MFでは17位(前回21位)に浮上。ハノーファーではスペイン人FWホセルに次いで2位。
(フットボールチャンネルより抜粋)
【コラム】
「今は自分の存在価値を証明したい」 長谷部誠が得た理想のポジション:Number Web
http://number.bunshun.jp/articles/-/822952
(Number Web より)
ドイツでの8シーズン目を戦っている長谷部誠。
昨季「守備的ミッドフィルダーとしてプレーしたい」と移籍したニュルンベルクでは、負傷による長期離脱で14試合にしか出場できなかったが、フランクフルトへ移籍した今季は出場停止だった1試合をのぞき、すべての試合に先発出場している。中盤の底に立ち、攻守にわたりチームの舵を握る任務を全うしている。
長谷部が担うのは、相手の攻撃の芽を摘む守備的ミッドフィルダーの役割だけではない。攻撃の起点となる仕事も求められ、そのオーダーにも応えている。システム上では中盤の底、1ボランチであっても、その姿はセントラル・ミッドフィルダーと呼ぶにふさわしい。
3月14日の第25節パーダーボルン戦では、完封勝利に貢献した。しかし、試合後に「今日は相手の攻撃のクオリティが高くなかったので、守備の面での評価は難しい」と語り、今季リーグでも下位の49失点(3月15日現在)と、攻撃力はあるけれど守備が弱い自チームの現実を見つめていた。下位チーム相手に、前線の選手は前へ行きたがる。しかし、守備に不安を抱える守備陣はDFラインを高く保つことに躊躇する。結果的に陣形が縦長に間延びしてしまい生じる危機。それを予期してなのか、センターサークル付近にポジションを取る長谷部が、激しく動く場面は少なかった。
チームの中央でディフェンス陣に声をかけ、その仕草で守備を修正する。得点機を生むような縦パスを入れるシーンもあったが、ボールを触るプレーだけでなく、そのポジショニングや動きで、チームを機能させているように感じた。
ドイツへ渡る前、思い描いていた日々。今やっと、そんな毎日を過ごせるようになった長谷部に3月19日練習場で話を訊いた。
ドイツ移籍当初、長谷部のポジションはサイドだった。
浦和レッズで守備的ミッドフィルダーとしてキャリアを積んだ長谷部は、'08年に移籍したドイツでもその場所で経験を積みたいと考えていただろう。そうすることで、当時1年あまり遠ざかっていた代表への復帰が叶えられると思っていたはずだ。実際、ドイツ移籍半年後に岡田武史監督のもとでレギュラーに定着し、W杯南アフリカ大会、ブラジル大会と2大会連続でキャプテンとして活躍した。
しかしドイツで彼がプレーしていたのは、中央のポジションではなかった。移籍当初は守備的ミッドフィルダーとしての起用が続いたが、徐々に長谷部の仕事場は、ピッチの中央からサイドへと変わっていった。監督が代わっても、中央でプレーする機会はなかなか訪れなかった。
ユーティリティか、中盤での低評価か。
右サイドのミッドフィルダーとしてプレーすることが多かったが、右サイドバックを務めることもあった。「ユーティリティな能力が評価されている」と言えば聞こえは良いが、サイドの選手としての評価しか得られていないともいえる状態が長く続いた。
「ヴォルフスブルクにいた5年半のうちで、中盤で本当に出られたというのは2シーズンとか、多分それくらい。それ以外はサイドの中盤だったり、サイドバックをやったりというのが長かった。ヴォルフスブルクは資金力のあるクラブなので、常に新しいライバルが加入してくる。選手個人のクオリティが高いチームでは、良いパフォーマンスができなければ試合には使ってもらえないし、ダメならまた新しい選手が獲得される」
競り合いや1対1でのフィジカルという課題。
欧州の選手たちと比べると、どうしても日本人選手はフィジカル面で不利である。よって、激しいコンタクトのある中央のポジションを日本人に任せるのは躊躇われる。それは、ミッドフィルダーに限らず、フォワードもディフェンダーも同様。だから、サイドのミッドフィルダー、サイドバックとして頭角を現す選手がいても、なかなか中央で勝負できる選手は少なかった。
「自分が使ってもらえないというのは、技術的な部分や戦術的な部分で劣るというよりも、フィジカル的な部分に課題があると思っていた。ヘディングを競り勝つとか、1対1の戦いだったり。そういうところで他の選手よりも劣っていると自分自身でも感じていた。もちろん、サイドでもそういうフィジカルコンタクトはある。でも、真ん中に比べたらずいぶんと少ないから」
クラブではサイドでキャリアを積み、代表では守備的ミッドフィルダーとしての任務を課される。同じサッカーと言えども、中央に立つのとサイドに立つのとでは、見える風景も違えば、ボールを受ける状況や仕事の質も違う。
長谷部の代表でのプレー自体には進化を感じながらも、「クラブで守備的ミッドフィルダーとしてのキャリアを積んでいれば、もっと成長できたかもしれない」と、そう考えてしまうこともあった。ヴォルフスブルクでサイドでプレーしている姿が、じれったい印象を与えていたのは事実だ。
「移籍をしてみて、初めてわかった部分でもある」
「ヴォルフスブルクにいたときは、ヴォルフスブルクのことしか知らなかった。だからブンデスの他のクラブの状況というのをあまりわからなかったんです。だけど移籍をしてみて、ニュルンベルクやフランクフルトと比べたら、ヴォルフスブルクは選手のクオリティが一番高い。そこで中盤として使ってもらえなかったのは自分の実力でもあるし、その高いレベルでは、自分はまだ認められていなかったということ。それはこうやって移籍をしてみて、初めてわかった部分でもある」
強豪クラブで優勝争いや欧州の大会を経験するというのも、もちろん選手として意味のあることだ。しかし、自分の力を最も発揮できるポジションでキャリアを積むことをファーストプライオリティとして、長谷部は移籍を決断した。
「自分はどちらかというとコンスタントにプレーできる選手」
そして現在、フランクフルトでは守備的ミッドフィルダーのレギュラーとして試合に起用され、地元紙の採点などでも今季の長谷部は高い評価を得ている。
「評価というのは第三者、自分以外の人がするもの。だから、もちろんそういうところも大事だけど、一番大事にしているのは自分がどう感じるかという部分。フランクフルトで課せられた役割というのは、ある程度自分とマッチしているのかなと思う」
年齢に相応しく、好不調の波を感じさせないプレーができる長谷部は、指揮官にとっても非常に頼もしい存在に違いない。
「このポジションは、チームのパフォーマンスにすごく影響を与えるポジション。もともと自分は、すごく良い時もなければ、すごく悪いときもない。どちらかというとコンスタントにプレーできる選手かなと思っている」
アギーレ体制の日本代表でもフランクフルトと同じ1ボランチで起用され、その能力を発揮していた。アジアカップでの結果は芳しいものではなかったが、代表と同じポジションをクラブでも務めていることの効果を、長谷部自身も感じていた。
「コンスタントにクラブで自分のポジションでプレーしていれば、代表へ行ったときに感覚的な部分で、正直すごく良いモノもあった。やりやすさというよりも感覚的なもの。身体の動きだとか、考えるスピードとか。だから言葉に表すのはなかなか難しいんですけど。
まあ、(アジアカップでは)結果が出なかったから、そんなことも言っていられないし、満足もしていないけれど」
「自分の存在価値を証明したい想いが強い」
念願のポジションで試合経験を積む毎日。当然、今までには抱かなかった欲も生まれてくるだろう。
「たとえば、ヴォルフスブルクとやったときは、自分がどれだけできるかというのを証明したいという気持ちになった。そういう意味ではホームでのヴォルフスブルク戦は、恩返しができたかなと。相手を苦しめることができたから」
2月3日のその試合は1-1とドローに終わったが、リーグ2位につける強敵相手に果敢に挑んだ長谷部は、地元紙が選ぶリーグのベストイレブンに選ばれるほどの高いパフォーマンスを披露した。
「今までは、1シーズン通してこういうポジションでプレーできていなかった。だから、今は充実感があります。このポジションでコンスタントに1シーズンを戦える(日本人)選手というのも少ないと思うし、ここで2シーズン、3シーズンと継続して高いパフォーマンスでプレーできれば、本当の実力と呼べるのかなと。今は自分の気持ちの中で、自分の存在価値というものを証明したい想いが強いですね」
年齢的にも、日本人選手として未知の領域に。
ここで改めて、ヴォルフスブルクで過ごした日々について訊いてみる。「サイドでプレーした時間があるから、今がある」という風な当たり障りのない答えが返ってくるかと思っていたが、長谷部の答えは全く違うものだった。
――ヴォルフスブルクでの経験がもたらしたものは?
「多少なりとも、サイドの選手の動きとかを学べたというか……」
――それくらいのことですか?
「あとはやっぱり、ヴォルフスブルクで長い間試合に出られなかったという悔しさ。それが、ある」
――それが一番大きいと。
「そうですね」
――31歳という年齢ですが、ここからやっと始まるという気持ちはありますか?
「年齢の部分で言えば、ヨーロッパの大きなリーグでコンスタントにプレーする日本人選手としては、これから未知の部分へ入っていくのかなぁと思います。ドイツでも、年齢で見られる、判断される部分は多少なりともあると思う。だから、そういうところを打開していくのが、新たな挑戦かなと思っています」
自身が成長することへの確信が言わせた言葉。
――それは、以前は想像していなかった挑戦ですか?
「そうですね。自分が思い描いたものとは全然違いますけど。ただ、そんな先のことは誰にもわからないものだから。今をがんばります」
パーダーボルン戦後、日本代表へのハリルホジッチ新監督就任について、「いくら、いい監督が来ても、選手が成長しなければ世界では勝てないと思います。それに尽きると思います」と短く話した長谷部。その言葉のなかには、自身がさらに成長することへの確信があったのかもしれない。
30歳を越えて、ドイツでやっとたどり着いた本来のポジション。そこで積む経験が、これからの長谷部を変えていくに違いないから。
(Number Web)